34スカイライン定番の錆?リフレッシュです
入庫していただいたのが海の日の前でしたので、約2ヵ月前のお仕事です。
日産車に多くみられる症状でしょうか。
リアのタイヤハウス周辺からサイドシル全体にわたっての錆を中心に、今回はトランクリッドのハイマウントブレーキランプ周辺、トランク室内も各部からの浸水でかなり進行していました。
リフトアップしてしばらく唖然とした後、作業開始です。
リフトアップしてまず判明したのがトランク室内の浸水の原因です。
タイヤハウス後部の裏側に左右ともほぼ同じ場所に穴があいていました。右側に関してはすぐ横にあるサービスホールのゴム製フタが入っていなかったため、錆の進行を早めたかもしれません。
室内左右の浸水の原因は判明しましたが、入庫時には中央部にも水たまりができていました。
こちらは案の定、トランクリッドのハイマウントブレーキランプ周辺の腐食が原因だったようです。オーナー様と協議の結果、埋めてしまうことになりました。
原因がわかったら、あとはひたすら、手を動かすだけです。
タイヤハウス外側の朽ちてしまった部分は切り出した部材を内側から貼っての溶接のあと、グラスウールで成形していきました。ドアエッジ下部の錆による欠損の補修とトランクリッドの穴埋めはグラスウールのみでおこないました。
グラスウールのみの補修だと強度に不安があるかもしれませんが、特に力がかかる場所でなければ溶接と違い、新たに鋼鈑を焼いてしまうことがないので再発防止には有効と考えています。
強度を求められる部分や大きな欠損があった場合は溶接を選択しています。
溶接やグラスウールでの成形作業の前に、当然防錆の作業がありますが、弊社では現在ウルト社の「ロストウム・バンダラー」という錆転換剤をメインで使用しています。過去にも様々な材料を使ってきましたが、ウルト社の製品は作業途中でのトラブル(パテ等との密着不良など)が少ないので、今のところは主力選手で頑張ってもらってます。
他にもアンダーボディーシーラーやキャビティワックス、マフラー等の防錆に用いるジンクスプレーなど、防錆関係は充実したメーカーさんだと思います。
初めの数日は、風呂に入ると頭から金気臭い粉?が落ちてきます。それから数日すると手や腕が錆転換剤に染まって紫色に。シーラー関係を使い始めた頃にはもうスーパーやコンビニに行くのも申し訳ないような手になっています。汚すのは下手な証拠と言いますが、ごもっともですね。
お盆休み前後に、まるで「スカイラインをおやりなさい」と言っているかのように集中して作業できる機会を得ることができました。パテ付け・パテ研ぎ・サフェーサーまでの工程を数日にわたって一人で黙々と進めていく時間は、まわりの音も気にならず、とても充実していたように思います。半袖のツナギで汗をかきながらパテを研げる時期なんて北海道ではほんの一瞬です。現に今はもう既に、ひそかにタイツを履いています。
サフェーサーがはいったら細かいラインなどを確認し、塗り手(兄)と相談しながら塗装の範囲を決定して、塗装の準備に移行していきます。
リフトに乗せられて可哀そうな状態だったクルマが塗装ブースに入った時は、すこしの間「ぽー」っとしてしまいます。先はまだまだ長いのですが、「一区切り」という感じがします。マスキング作業も塗装範囲が複雑な場合は結構頭をつかいます。細かい箇所の申し送りをしつつ、兄弟ならではの馬鹿話もしつつ、でもやはり沈黙が多いです。
今回の34スカイラインは3コートパールにくわえて補修歴もかなり多く見受けられたため、調色作業は困難を極めたようです。下地と違って塗りは一発勝負というか、やり直しが明らかにコストにも反映されてしまうので本当に大変だといつも思います。
仕上がりをドキドキしながら待ち、翌日からは磨きと組みつけ作業。補修範囲が広ければ当然手直しが必要な場合もあります。どうしようか迷ったりもしますが、そういう時はあれこれ考えずに「エイッ」とやってしまったほうが良いみたいです。
トリム類を着けてしまう前にキャビティワックスを要所々に塗布していきます。ノズルに長めのホースがついていますので、スカッフプレートなどをはずした小さな穴からも入れていくことができます。あちこち心配しはじめたらきりがないですが、できる範囲での予防でも、きっと無駄にはならないはず。
最後にトランクリッドの日産エンブレムを、ハイマウントブレーキランプが無いぶん気持ち上めに貼って完成・・・だったんですが、トランクキーの動作確認が不十分だったため、遠方にもかかわらず再度ご来店いただくことになってしまいました。誠に申し訳ありませんでした。
今回の錆修理、社長から「2人でやってみなさい」と言われ、アドバイスだけはしてもらいましたが実際の作業はほぼ2人だけで行いました。
経験の差が一番出るのはスピードかもしれません。なかなか進まない状況に一番ハラハラしていたのはおそらく社長だと思います。
自分達で考え、調べ、できうる限りの防錆対策を模索する作業は、一つの明確な正解があるわけではないのでとても苦しみます。部品交換で済む場所ならそれがベストですが、車種それぞれの持病のような症状もありますし。これは本当に経験を重ねていくしかないなと思います。
T様、この度は遠方からのご入庫誠にありがとうございました。お車の状況を細部にわたるまで把握なさっていたことが早期発見にもつながったことと思います。
次回はフロントまわりのリフレッシュですね。お待ちしております!
洋介