日産 ラシーンの全塗装です(前編)
はじめにお問い合わせをいただいたのが9月でした。実際にお車の状態を見せていただき、後日お見積りを提示させていただきました。
数日後にご回答をいただきまして、10月から作業スタートです。
メニューとしましては外装一式の板金・塗装、ドアの内側及びドアを開けた際に見える範囲(ピラー部分)、ルーフレール、タイヤキャリア、グリルガードなどなど。
基本的にはオリジナルのカラーでの塗装となりますが、細部はオーナーさんのリクエストと弊社からのご提案で決めていただきました。長め記事になりそうなので、前編と後編に分けますね(笑)。
まずはラシーンというクルマを知るべくインターネットで下調べをはじめてみると・・・そこには驚愕の世界が存在しておりました。
1993年の東京モーターショーで参考出品された試作車が大変好評だったため、細部を変更して市販化。1994年~2000年まで一度もフルモデルチェンジされることはなかったものの、ここでは紹介しきれないほどのマイナーチェンジを繰り返し、様々な使用の車両が現在も中古車業界に流通しているそうです。
そして一番驚いたのが、その密か?な人気です。関東・関西には専門店も存在し、同じ日産のパオ・フィガロなどと共に、熱いファンの方が沢山いらっしゃる訳です。専門店さんのホームページを拝見させていただくと、程度の良い中古車の販売はもちろんのこと、内外装・シート・ハンドルなどなどオーナーさんのお好みでフルコースの製作をおこなっていると・・・。当然のことながら、一台にかける予算もハンパないです。
さて、おおまかな損傷箇所を挙げますと・・・
と、いった感じで、年式相応・日産車特有?の「錆」という大敵が待ってます。社長と打ち合わせをしながら錆の修理方法を検討しました。リヤタイヤ周辺は特に錆の進行が著しく、マッドガードの取り付け部分も朽ちてしまってます。タイヤハウスの外板と内板との合わせ目はことごとく錆びており、ベルトサンダー等で削り進めていくと・・・無くなってしまいます。必要に応じて部材を切り出して溶接、パテ付けができるようになるまで長い長い道のりです。
どの車にも言えることですが、錆が出やすい部分にはそれなりの条件が揃っていると言えると思います。タイヤハウスの場合だと雨水や雪を跳ね上げ、常に水分が存在する過酷な状況ですね。モールやその他の外装部品が取り付けられているパネルも、そこに水分を貯め込んでしまいがちだと思います。新車の状態ではそういったリスクの伴う箇所には水抜き穴や防錆ワックス等、様々な対策が施されていますが、長年乗っていれば泥やホコリも蓄積されていき、水抜きの穴なども詰まってしまうようです。
これは「しょうがない」事だとも思いますが、修理・改善をしていく以上は何かしら新たな対策を講じていかなくてはいけません。自動車修理のアフターマーケット業界では各メーカーさんが常に新たな防錆対策商品を開発してくれておりますが、「これがベスト」というものはまだ無いと思います。なにせ相手は「自然」ですし。
時間を見つけては板金と防錆処理を繰り返し、下回りにアンダーボディーシーラーを塗布したところです。コレを塗ると悪かった箇所を全て封印できるような気がするのですが・・・
ある程度まで作業が進んだところでガラス屋さんに来てもらいガラスを外してもらいます。なかなか手を出せずにいたスライド式のサンルーフもガラス屋さんに手伝ってもらって外すことがでいました。ガラスを外すと、また新たな錆の登場です。サンルーフ付きの使用の場合、ルーフに継ぎ目があり、その接合部がシーリングされています。そこからブクブクと錆が浮いていて、はじめは左右フロントドアの上あたり2か所かと思ったら、結局グルッと一周でした。古いシーリングを掘り返し、防錆処理後、再度シーリングです。せっかくですから。
ちなみにフロントガラスはモールのみの交換で済んだので、ガラスは外さずに作業できました。
ようやく内外装にサフェーサーがはいり、外装部品も塗装待ちという状況になり、次にやってくる問題は塗装の順番とタイミングです。狭い工場のため、ドアなどを外して置いておけるスペースに限りがあり、いったん塗装ブースに入ってしまうと塗装~乾燥だけでもかなりの時間塗装ブースを独占してしまいます。バンパーなどの外装部品は塗装~乾燥が済んだらいったん二階へ運び入れ、ドアパネル類はまず裏側から。乾燥したら今度は表側を塗装するためのマスキングに貼り直し。合間をみて他の車両の塗装もおこない、またラシーンを塗装ブースへ。緊急で入ってくる仕事にも対応しつつ、時期的にタイヤ交換も重なってしまいました。
さてさて。下地も完成しつつあるので、これから塗装に入ります。続きは「後編」にて。
お楽しみに~